風土と歴史が育んだ大島紬、その歴史、味わいを紐解く

海を越え、時を超えて、伝えられた本場大島紬のルーツ

経糸と緯糸が交差しあって、点が線となり、線が柄となる大島紬の絣模様。 そのルーツは、インドで生まれたイカットという絣織りで、 イカットがスマトラ、ジャワから黒潮にのって北上し、沖縄、南西諸島の久米島を経て、 奄美大島に伝承されたと言われています。その精緻な絣技法が、 さらに、南西諸島を通って鹿児島市、都城市へと伝えられ、 奄美大島、鹿児島、都城の「本場大島紬」が国の伝統的工芸品の指定を受けています。
※南西諸島/鹿児島県から沖縄県にかけて連なる美しい島々をいう

袖を通せば、織人の手の温もりが、心にしみいります

奄美の風景

奈良東大寺の献物帳に「南の島から褐色の紬が献上された」という記録が遺っています。大島紬が文献に示された最初の記述ですが、奈良時代より手紡ぎ糸で織った紬の長い歴史があり、江戸時代には薩摩藩へ納める重要な貢ぎ物として極度に高度な技術が要求されて精緻な絣柄に発展しました。

明治大正期以降は、紬の名であっても真綿を手で紡いだ紬糸ではなく、しなやかでなめらかな絹糸が用いられるようになり、絹の優しさが軽やかな地風と絹鳴りの音を生み出しました。

大島紬の特色には、絣の他にも手間を惜しまぬ糸染めがあります。テーチ木(車輪梅)という植物染料で糸を染めてから鉄分の多い泥田で媒染する泥大島、藍染を施した藍大島、泥と藍を併用した泥藍大島、さまざまな彩りの染料で染めた色大島、白い地色に色で模様を織り出した白大島などバラエティも豊か。その独特のツヤ、着崩れしにくく、シワになりにくく、着れば着るほど肌になじんで、色に深みが増す、人の手の丹精を込めた豊かな味わいと確かな気品をお楽しみください。

心を紡ぎ、愛を織る(大島紬の職人たちの仕事風景)

母、娘、孫へと三代に愛される大島紬の三大産地、奄美、鹿児島、都城

糸染めだけでも数十回の作業を繰り返し、手織りの高機で丹念に織り上げられるため、丈夫で柔軟性をもった生地となって、母から娘へ、孫へと三代にわたって愛用され続ける大島紬。長い時の流れの中で独創の美を磨き上げた奄美大島の他、今では鹿児島市や宮崎県の都城市でも数多くの織工房が存在し、それぞれに特長ある大島紬を創り続けています。その三大産地を代表する織元の作品を取り揃えてご紹介。伝統の技法を守り伝える至高の名品、現代感覚が息づく新しい美を映した逸品にご注目ください。